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無名バンドによるアメリカツアーの方法と記録 "Rock, Faith, Anime 2009" (インディーズバンド、海外ツアー、アメリカツアー、方法、やり方)
その6 Little Rock, AR 4月9日
一番心配をしていた700km、8時間ドライブの日だった。 理論上は8時間でも、不慮の事態はいつでもあり得るし、休憩や食事の時間も考えなければならない。 本来は朝6時ないし7時くらいにモーテルを出発したいところだった。 当初、そのように予定していたのだけれど、前の晩、モーテルに到着したのはやはり夜中の2時ごろ、さすがに疲れがたまっていたのだろう、はっしーとジェイクは、午前9時の出発を主張した。確かに、無事に行けばそれでも大丈夫かもしれない。
だが、実際に朝9時に彼らの部屋をノックすると、彼らはまだ寝ていた(笑) しかし大急ぎで準備をし、なんとか朝9時ちょいすぎくらいいは、Houstonの北東のはずれにあるHumbleのモーテルを出発できたのだった。
8時間のドライブはしかし、ジェイクの運転と僕のナビゲーションが、フルに発揮された道程となった。 すでに運転もナビもここまでの経験で慣れていたこと、いちばん心配していた日ということで、すべてのチェックポイントを入念に下調べをしていたことなどが原因だった。
基本的に、ハイウェイに沿って行けば良いだけなのだけれど、途中の街にさしかかったところで、なぜか、まっすぐ行けばよいものを、ハイウェイが街を迂回していたり、環状道路を通っていかなければいけなかったりして、街の入り口と出口で切り替えポイントをクリアする必要があった。そのような街がいくつもあって、このドライブを油断のならないものにしていた。
テキサスを縦に走り、やっとテキサスを抜け、少しばかりルイジアナを通る。 テキサスのメキシコっぽい風景や、背の低い潅木のような景色が、次第に、淡い緑の豊かな森っぽい景色に変化していく。平原の景色も砂漠っぽいものから青々とした草原へと変化していった。
いちばん危なかったのは、ハイウェイからはからずもいつのまにか外れてしまい、どこかの小さな町の中に出てしまった時だった。本来は、大きなハイウェイに合流しなければならないところを、ディレクションが非常にわかりにくく、また看板も非常にまぎらわしいため、合流に失敗して、よくわからない街の中に出てしまった。しかし標識の表示を頼りにいくつか後の入り口で無事に本来乗るべきハイウェイに合流することができた。標識はあるものの、どんどんと知らない道に入っていってしまうため、本当に不安な思いをした。
もうひとつちょっとした障害だったのは、途中の街で、やはり街をかこむ環状線を通り抜けようとした際に、事故による渋滞に出くわしたときだった。ちっとも進まないため、手近な出口からルートの外に出るべきか、知らない道に出るリスクを侵さずにそのまま待つべきか迷ったが、幸いにして迷っているうちに事故の処理が終わったらしく渋滞は解消された。タイムロスはせいぜい15分程度だったと思う。
道中、ハイウェイのわきにあるフードガーデンで大好きなバーガーキングにありつくことができた。日本から一度姿を消したBurger Kingは2008年に日本に再上陸したが、やはりこちらで食べるものの方が残念ながらおいしい気がする。どうやら気のせいではないようだ。
多少の障害はあったものの、予想以上に順調にドライヴし、アーカンソー州の入り口あたりにあるRest Areaで一息ついた頃には、ちらほらと雨が降り出していた。
テキサス、ルイジアナ、アーカンソー、と、広々とダイナミックな景色を楽しみながら、結局この日はいちばんドライヴを満喫した日となった。 そして元走り屋であるところの特攻と書いてぶっこみなジェイクは予定タイムを上回る速さで僕らをリトルロックへと運んだ。警察につかまらなかったのは幸いだったかもしれない。 当然ながらドライヴの際には皆アメリカの強い日差しにサングラスをするわけだけれど、メンバーの中でひとりだけグラサンが似合うジェイクはなかなかに雰囲気を出していた。
そしてLittle Rockの街は、なかなかに雰囲気のある街だった。 クラシカルで、なによりもアートな街並みと雰囲気。おしゃれな街並み。Prettyという言葉が似合うような気がした。 そういえばHoustonのギグが終わったあとに、お客さんと話していて、明日はLittle Rockに行くんだと言うと、あそこは大好きな街だ、いけばわかる、と言っていたが、確かに文化的でアートで素敵な街だと思った。僕らはダウンタウンのあたりしか見ていないので、断言はできないが、いかにも街をあげてアートを歓迎している、といった感じの街だった。
ヴェニューに電話をかけ、音質の悪いMetroPCSの携帯電話に苦戦しつつも車を停める場所などを聞きつけ会場入りする。 到着したハコの名前はSticky Fingerz Rockn'Roll Chicken Shack。 ちっぽけな額だが100ドルのギャラに食事付きという条件だった。 いまどき僕らのような無名のバンドに対しては悪くない待遇といえた。 実際に、食事も非常に良いものにありつくことができて、またサウンドマンもしっかりリハーサルや仕事をしており、 これだけミュージシャンに良い待遇をしてくれたら、良い演奏ができてあたりまえだと思わせた。 このハコはミュージシャンに良い演奏をさせる方法を知っている。そう思った。 ハコ自体も広くて雰囲気があり、また併設しているレストランも良い感じでにぎわっており、ハコの経営にも無理がなく、結論からいうとこれは良いハコだと感じた。
PA担当のマエストロさんは非常になんというか気のいいおっちゃんで、なんというのか給料もよいとは限らないが皆でアートやミュージックを愛している様子が伝わってきた。 そしてHoustonあたりでは対バンの子たちの英語もかなり聞き取れて自信がついていたのだが、Little Rockに来たとたんにウェイトレスのねえちゃんの英語が聞き取れなくなった。しかしPAのマエストロさんとかマネージャーのおっちゃんはまだわかりやすかったので助かったのだった。
不幸にして僕たちが演奏する時間が近づくにつれ天気が悪くなってきた。 それなりにお客さんが入ってきてはいたが、会場自体が広いせいもあってなかなか満員という感じにはならない。 僕は、リハーサルの際に、リハーサルというものがからっきし苦手なのでいつものことではあるが、まったく声が出なかったことに自己嫌悪を感じ落ち込んでいた。
思えば祝福されたICC Dallasのワーシップ演奏は別として、AustinでもHoustonでも、モニター環境が悪くヴォーカルの調子が良くなかった。そういったこともありヴォーカルについては少しナーヴァスになっていた。 しかし必死で発声練習のウォーミングアップを繰り返す中で、私はひとつの精神的な壁を越えたのを感じた。 つまりは不完全であっても、情熱的に歌うこと、ぶつけること、つまりは、自分にとってステージに上がることは、自分を犠牲にすることだということに気が付いた。ジーザスがそうしたように、自分を生贄にささげること。ジーザスは完璧な存在だったが、僕は不完全でできそこないな存在だ。だがそんな不完全な自分だからこそ、ステージで自らを生贄にささげることができる。ここまできて突如として自分がステージに上がることの意味を悟ったのだった。そして自分にとっての歌うことの意味、それを投げることができるのは自分だけだと知った。
この夜のステージは明らかに壁を越えた瞬間となった。 この日、とても良いショウをし、これ以降は、多少の出来不出来は関係なく、すべて良いショウができるようになり絶好調となったのだった。 「OK, Little Rock, I'm a little Japanese, and I will give you some Big Rock.」と、ベタベタなMCをし、たたきつけるような演奏をした。 幸いなことに結構お客さんも入ってくれて、演奏後は今までに増して情熱的な反応と賞賛をもらった。 この日のステージのハイライトは、ラスト2曲の時点で、盛り上がったお客さんの一人が、僕にウイスキーのショットを渡したときだった。 僕は、ノドと演奏のため、一口だけ口をつけて返すつもりだった。 しかし、客席は"Drink down the whole shot!"と連呼して盛り上がっている。 お客さんは面白がっているだけかもしれないが、それでもかまわない。 しょうがないから酒が弱いかのようなフリをして、鼻をつまんで飲み干した。 本当はこれっくらいどうってことはない。 もちろんお客さんは大喜びだった。 しかし最後の曲に入ったとたん、がくんと酔いが回るのがわかった。 とびはねながら演奏しているし、すきっぱらに飲み干したから当然だ。 最後の曲は"Changes!!"だった。酔いを感じながら弾ききった。
お客さんが面白がってくれただけでも目的は果たした。 ウイスキーを差し出してくれるくらいに、壁を壊して客席との距離を縮めることができたということは大きい。 僕らに特別な情熱を持って好きになってくれる人というのは、いつだってどこか世間から不器用に外れてしまった人たちだ。 この夜もそういう人たちに出会い、たくさんの言葉を交わした。 そういう人たちがいる限り、僕らは彼らのためにすべてを捨てて演奏できる。 たくさん恥をかこう、たくさん不恰好に飛び跳ねよう。 それが僕らのなすべき仕事だからだ。
これだけの良いショウをしたのだが、 嫁さんのビデオカメラの操作ミスにより、不運なことに記録はほとんど残っていない。
演奏が終わって、機材の搬出をすべく扉を開けると、 外はものすごい雷雨だった。サンダー&ライトニング。 文字通り嵐を呼ぶ演奏、っていうか、これはちょっと。 「トルネードが発生してるらしい」と聞かされる。 大丈夫かよ。
ある意味、天候が悪くなければ、もっとお客さんが来てくれたかもしれない。 同じことはNashvilleでもNYCでも言われた。どちらも、十分お客さんは居たけれど、天気がよければもっと来ただろうと言われた。 その意味では、このツアー中盤、天候には恵まれていなかった部分があるかもしれない。
ギャラを受け取りハコを去る頃には幸い雨はやんだ。 うちの嫁さんはハコのスタッフ、レストランのウエイトレスの子と仲良くなって写真を撮っている。 ハコの人たちに、最寄のモーテルはどこかと聞く。 実際に行ってみて、値段を聞くと、ちょっと高い。 聞くと、それはダウンタウンの真ん中だからだと言う。 モーテルの受付で働く、カンフー映画に出てきそうな中国系の兄ちゃんは、親切にも数マイル先にある別のモーテルを教えてくれた。 うーん、アジア人同士の親近感か。 助かりました、ありがとう。
さあ、明日はカントリーの都、Nashvilleだ。
mixi日記の記録
Little Rock AR 無事に8時間ドライブを終えてリトルロックです。なかなかロックな街です。 10PMからショウです。 うまくいきますように。 北緯: +34.7533 東経:-92.2690 (誤差: 2403m以内)から投稿しました。 http://maps.google.com/maps?hl=ja&q=+34.7533,-92.2690&ll=+34.7533,-92.2690&spn=2403&z=14 Posted from MixiDock mini
Big Rock AR 2009年04月10日14:55 ショウ終わって対バンドのブルースバンドを見てます。
April 9th, Little Rock AR, Setlist 1.i love you, now ur on your own 2.Iron Hammer 3.Illusions 4.Freedoom 5.First Pop 6.He's Still With Us 7.Karma Flower 8.Winning Song 9.Changes!
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