|
ゆうじろうインタビュー 「fireworks」
ゆうじろう: スモークマシン焚いて、ぽよんっと出現ゆうじろう。
Tone: 当面最後の出現になるかな。
ゆうじろう: そうなるかもしれないねぇ。では、はじめよう、Imari Tones、10年間の歩みにして、自主制作の音楽の旅、その、しめくくりとなるであろう、最後の一枚、「fireworks」の解説インタビューだね。
Tone: お手やわらかに頼みます。
ゆうじろう: そうはいくか。まず最初に聞いておこう。 すごい安直な質問だけど、この「fireworks」っていうのは、どんな作品?
Tone: Imari Tonesの自主制作の旅をしめくくる最後の制作、なんだけど、 同時に作った「Color Of Hers」が、様式美を意識したストレートなハードロック、というちょっとした意図でもってまとめあげた作品だったのに対して、この「fireworks」は、もっと肩の力を抜いて、本来のイマリ・トーンズらしい、バラエティと幅の広さをもって何も考えずにまとめあげた作品。もっといっちゃうと、もうこれは残り物処理。
ゆうじろう: 残り物処理!? それは聞き捨てならないなぁ。
Tone: 聞き捨てならないんだけどさ、実際そうなんだから、しょうがないじゃん。 それに、残り物処理って、楽しいんだぜ、もう後のことなにも考えなくていいし。 そういった、最後の花火にふさわしい、すがすがしい後片付けのお祭りアルバム。 それが、この「fireworks」さ。
ゆうじろう: それで、実際出来はどうだったの?
Tone: それがねー、悪くないよ。ほら、同時に作った「Color Of Hers」を、「最高傑作」だって言ったじゃん。 確かに、それも間違ってはいないと思うんだけど、それは、あくまでハードロック的な視点での話であって、 もっと、聴きやすさでいったらこっちの上がよっぽど上かもしれない。 というのは、「Color Of Hers」はいっぱい力んでたじゃん? でも、こっちのアルバムには力みがないんだよね。 力みが無いぶん、実はこっちの方が破壊力が上ってことも、十分にあるかもしれない。 演奏やサウンドのクオリティは、同時に作ったからまったく同じわけだしね。
ゆうじろう: 前回のおさらいも含めて、このアルバムが出来あがるまでのいきさつを話してほしいんだ。 繰り返しになるけど、君はImari Tonesという名の音楽をもって、2004年いっぱい、2005年のはじめくらいまで、ライヴ活動をしたよね。で、2005年の3月でそれにいったん終止符を打って、これを機会にと録音制作にとりかかった。
Tone: 人生のまとめとなる録音制作にね。 高校時代、少年時代に僕は、100曲余りの楽曲を書いた。 それらをきちんとした形で制作することが、僕のひとつのライフワークだった。 イマリちゃんに出会ってから10年、その間の、苦しくもあったけど幸福でもあった旅路、 その旅路を、これほど豊かな財産として形にすることができて、とても幸福だと思ってる。 その旅路で得たものを、きちんと形として残すために、今回、こうして制作にとりかかったんだ。
ゆうじろう: 半年で50曲っていう制作ね(笑)
Tone: ちょっとべらぼうな数だけどね。でもいい機会だと思った。僕にはそれができるからね。逆に、今を逃したら、作る機会がいつあるかわからないと思ったから。今までの旅路の成果をまとめあげるべき時がきたと思ったんだ。 今から10年の昔、Tone少年は、イマリちゃんに出会ったのね。 そんで、少年は、なんでもできると思っていた。やらなくちゃいけないことがある、と思っていた。 それは、やはりすぐには形にならなかったし、いろんな障害やマイナスもくらって、回り道もした。 でも、10年たって、やっと今、これから、それをできるところまで来た、今、本当にそう思ってる。 そんで、こうして、10年の旅路は、心の財産として、こうして音楽という形になった。
ゆうじろう: 具体的には、ライヴ活動をやめてからの間、君はどんなことを考えていたのかな。そして、これから、どういう活動をしていこうと思ってるの?
Tone: ひととおりのことは、前の二枚の解説のときに話したと思うんだ。 ライヴ活動を、2003年頃から準備して、2004年度一杯、やってたわけだよね、それなりに激しいライヴ活動を。もちろんそれは楽しかったし、必要なことだったし、それを通じて僕はとてもたくさんの大事なものを発見した。それこそどんな授業料を払ったって足りないくらいのことをね。 でも同時に、こういったライヴ活動や音楽活動について、疑問も持っていたんだ。 日本の音楽業界や、シーンの環境やシステムということについてもそうだし、それこそアメリカやイギリスあたりとは、ロックや音楽の根付き方も違うでしょ? たとえばここ東京においても、地方だってそうだろうけど、たくさんの若者が、ギターやベースを抱えて、プロになろうとしてがんばってライヴ活動をしているわけよ。でもそれって、果たして本当に正しいのかな、と。方法論というよりも、そもそものところで本当に正しいんだろうか、と、ちょっと疑問を持っていた。
ゆうじろう: 確か、君はそもそもがプロになろうっていうのは思ってなかったんだよね。
Tone: 別になりたくないってんじゃないんだけど、プロってのがピンと来なかったんだ、なんか違う気がして。 そもそも僕にとってはロックンロールは芸術であり、芸術っていうのは生き方や人生の表現だった。 だから、それを完成させるには、いちばん大きな作品であるところの、自分の人生や生き方が真ん中にくるべきだよな、と思ってたんだ。 だから、僕の考えるロックンロールっていうのは、生活とか人生とかと、たぶん深く関わってる。 で、僕はさ、漂泊の救世主とかそういう概念も発明しちゃったし、もう芸術に身を捧げるって決めてるからさ、 こういった現在の日本の状況で、必然性をともなった音楽やロックンロールの姿、在り方って、どんなものなのかなー、って考えてた。 そしたら思いついたんだ。あ、政治家になろう、って。
ゆうじろう: 政治家?・・・・・・・あ、でもそれっていいかも。
Tone: そうそう、その反応。これを思いついて以来、20人くらいの人にこの事を話したんだけど、ほとんどの人が、意外なくらい、あ、でもそれってわかる、って納得してくれた。僕にとってはわりと自然な事なんだよね。そもそもロックンロールは、世界を変えよう、社会を変えようっていうエネルギーと結びついて大きくなったものなんだからさ。
ゆうじろう: 君はいつも、ロックンロールは楽器を鳴らすだけじゃないって言ってきたものね。
Tone: そうそう。あと個人的なことなんだけど、思い出したんだよね。僕は少年の頃、法律家になるか〜、と思って勉強してたんだけど、それはイマリちゃんに出会ったからボツになっちゃったんだけどさ、でも思い出したんだよね、僕に「法律家になれ」って言ってくれた人がいるんだけど、よく思い出してみるとその人、「法律家か、政治家になれ」って言ってたんだよね。あ、じゃあそっちならむしろ今ならなれるぢゃん、って。
ゆうじろう: 政治家になれば、っていうのは、確か15歳くらいで人格が変わるのであれば、っていう条件付きだったんだよね。
Tone: うん、で、実際には変わったぢゃん? ていうか、変わるように仕向けたのは他でもないゆうれいである君だし。
ゆうじろう: そうそう。わるいね〜。
Tone: わるいね〜、ぢゃないよ、ほんとに。僕はもうちっと平穏でまともな人生コースも良かったよ。今更遅いけどね(笑)
ゆうじろう: まぁまぁ、人生も宇宙も、すべて計画された必然で編みこまれてるんだし。
Tone: で、今、そっちのことをいろいろ調べて研究してるんだけど、そうこうしてるうちに、Raphyさんと未藍さんが、米持さんとレコーディング始めちゃってなんだか盛り上がってるでしょ? 米持さんと出会えたことは、たぶん僕にとってもかなーり大きいことだし。なにせ少年時代のヒーローの一人よ。縁は決して浅くない。僕が使っていたギターとかさ。お話してみると、持っているバックグラウンドとか、もっとそうだよね。僕は、少年時代の僕は、誰かに出会うために巣立ったのだとしたら、米持氏は、その出会うべき人の一人の方であることは違いないだろうね。有名人だから構わず名前書いちゃうけどさ。あ、こういう人と出会っていくべきだったんだろうなー、っていう。音楽的にね。そんな感じで、なんか妙に視野広くなっちゃうし。
ゆうじろう: どうなることやら。
Tone: ロックンロールとね、政治って、あ、これは一緒のものだな、っていうのはすぐにわかったのね。 だから、これは、双方にいい作用をもたらしてくれるかもしれない、っていうのは思うのね。うまくいけばだけどね。 自分というルーツと、この日本におけるロックンロールの在り方と、自分の考えるロックンロールというものを考えた上での、自然な答え。僕にとってはそういうことだったね。僕にとっては、これはロックンロールを極めていくための道であり、ロックンロールの延長線上にあるものだよ。 ともあれ。そっちのことはあまりここでは語りたくないんだ。 そっちはそっち専用のウェブサイト作ればいいんだしね。 ここは音楽のホームページなんだから、最小限のことだけ書いて、あとは音楽のことを語りたい。
ゆうじろう: そういったことを考えながら作られた作品であると。
Tone: そうなんだよね。でも、異能路線をきっちり追求した「異能レース」、素朴な心象風景に立ち戻った「無責任なメシア」と前の二枚を作ったけど、今回の「Color Of Hers」は、より記憶や心の奥の方に、本気で切りこんでいかないといけない作品だったし、ヴォーカルにしろなんにしろ大変だったよね。「Color Of Hers」の高度の緊張の裏で、高度に弛緩した状態が、この「fireworks」だったともいえる。 自ら叩くドラムも、前の二枚で経験をつんで2回目ということで、それなりに安定したものができてよかった。ヴォーカルに起こった技術的なブレイクスルーも奇跡のひとつだと思う。これについてはこの前話したよね。そういった要素がからみあって、この「fireworks」は、図らずもとても良い、良いというか、あるべきものがきちんとあるべきところに収まった作品になったんじゃないかな。どうやら最後で辻褄は合ったね。 ギターソロについては、この前の二枚もそうだったように、今回も「Color Of Hers」と「fireworks」の2枚分のギターソロを1日で弾いてしまった。手を抜いたわけじゃないと思うよ(笑) 前の二枚のときは、2ヶ月近くギターを弾いてなかったためにいきなり大量に弾いて指から血を出しながらのプレイだったけど、今回はそんなことは無かった。前回の経験で懲りて、今度はときどきギターの練習してたからね(笑)
ゆうじろう: なんて怠惰なギタリストだ。
Tone: すんません。でも、しょせん音楽家は音楽やってる時間なんてそんなに無いからさぁ(笑) でね、これは言っておきたいんだけど、ね、高校時代に100曲余りの楽曲を書いて以来。イマリちゃんに出会い、'98年にコンピュータによるレコーディングシステムを構築し。世紀かわってからは東京に来てライヴ活動もやってみて。こうして自分なりの考えで、インディペンデントな音楽・芸術の活動をやってきたんだけど。今、こうして、高校時代のImari Classicsにしろ、今まで作ってきた楽曲にしろ、主要なものは形にすることができた。あたたかみを大事にした、自主録音という、もっともピュアな形でね。 もちろん全部の曲を録音できたわけじゃない。高校時代の楽曲だって残ってるし、その後に作ったものだってまだ残ってる。でも、主要なものや、だいたいのものは形にできた。 ぶっちゃけね、芸術家、音楽家としては、これで死んでも悔いは無いですよ。 聴いてもらえばわかると思うんだけど、これは、遺書以外の何物でもないのね。 いってしまえば、イマリ・トーンズとして録音制作を始めて以来、すべての作品が遺書だったと言ってもいいんだけど、 だって、商業的なものは何もないわけだし、作る上で何か目的があったのだとしたら、それは遺書以外に目的は無いわけさ。そういう気持ちだよね。
ゆうじろう: で、今君は、イマリちゃんに出会って以来、10年かけて、遺書を書き終えた、と。
Tone: そう。自筆の遺書。これは、芸術家、音楽家として、きっと書いておかなくてはいけないものだったと思うんだ。 でね、これを書き終えて、今、僕はやっと、自由になれる。これも本当なんだ。 '98年に、Studio Pelで録音制作を始めて以来。 僕は、これで10枚のアルバムを作った。 クオリティだって妥協はしてない。メジャーの価値観とは違うけれど、現代だから可能となった、自宅録音ならではの価値観で、芸術の名に恥じないものは作ってきた。 命を削るつもりで最後のこの制作に取りかかったけど、 純粋に芸術家としては、最低限、これで死んでも悔いはない。 だからね、僕は、純粋に芸術家としては、もう、やるべきことはやり遂げたんだ。死んでもいいと思うものをやったのだからね。 だから、逆にこれから、僕は本当に自由になれる。 もう芸術という運命の重荷に縛られることもない。 だから、政治にだって何だって、この身を尽力することができるだろうし、 たとえば売れ線に走れといわれたら喜んで売れ線に走るよ(笑) だって、もう作るべきものは作ったし、いつだってこれらを発表することができる、死んだってこれが残るってことじゃん? とにかく、これをやり遂げたということは、僕にとっては、憑き物が落ちたってわけじゃないけど、本当に解放された気分なんだ。 これから、あるいはそれなりの規模でリリースされるような作品も、作るのかもしれないし、あるいは作らないかもしれない、 あるいはちっとはキャリアを積んでいくのかもしれない。 でもなんにせよ、ひとつ覚えておいてほしいのは、僕が、芸術家として、純粋に作ったのは、いつだって、10代20代を通して自主制作したこの10枚なんだ、ってこと。 かけがえのない青春を過ごし、ロックンロールの真実を発見し、楽曲を書いた10代、 イマリちゃんに出会い、その後、困難な状況を経て、ロックンロールの真実を取り戻すために戦った20代、 それを通じて、自分の手で制作したこの10枚こそが、自分の人生の真実なんだってこと。 ぶっちゃけ正味、20代のうちに自らの手でこうしたことをやり遂げることができたことは、芸術家として、またミュージシャンとして、とても幸福なことであり、また、とても有利なことであると思う。
ゆうじろう: とても有利なことである、と?
Tone: うん、かなり有利なんじゃないかな。だって、今後めちゃくちゃ自由だよ。そしたら、発展の可能性はいくらでもある。もう人質に取られるものは何もないんだし。この歳でこんな有利なところへ来れた人も、そんなにいないんじゃないかな、推測だけど、きっと。 僕はまるで未婚の母のような気分だったんだよ。 これらの作品を育てあげて形にするまでは、何もできない、ってね。 もちろん、音楽という子供はこれからも僕にいろんな事を要求するだろうけど、 とにかくね、こうして、10枚の作品を作り上げ、今僕は、本当に解放された気分なんだ。 これから、心おきなく、自由な気持ちで、新しいステップに踏み出せると思う。
ゆうじろう: なるほどね。まぁ大変だったみたいだね、今まで。 じゃあ、背景はわかったので、アルバムの解説に戻ろう。 まず、タイトルとジャケットなんだけど、この「fireworks」っていうのはどういうタイトルなの?
Tone: 読んで字のごとく、花火のことだよね。 あのね、今回の二枚については、タイトルっていうのは、実はそんなに意図は無いの。 夏頃にさ、4枚アルバムを作るっていうんで、ジャケットどうしようかな〜と考えていて、 ジャケットのアイディアを考えていたのね。で、いくつか思いついて、写真を撮ってみたわけ。 アルバムの内容とか全く考えずにね。 で、その適当に撮った写真を、そのまま採用して終了。 前の二枚にしたってそうだけど、 今回も、イマリちゃんの背中の写真があったから「Color Of Hers」、 花火の写真があったから「fireworks」、 それだけだよ、ほんと。音楽の内容とも、まぁなんとなく合うかなぁ、って感じで。
ゆうじろう: ほんとにそれだけなんだ。
Tone: 申し訳ないね(笑) まぁいいじゃない。ジャケットなんて、しょせんただのジャケットなんだから。 タイトルは、名前が無いと困るから付けるってだけのものでさ(笑) 別に予算のかかった商業的な作品じゃないわけだからね。 でもね、この「fireworks」のジャケ、すごくいいと思わない? これね、今年の夏に、隅田川花火大会を見に行った時に撮ったのね。 表のジャケは、すごいアンティークで不思議なセピア色をしてるだろ。しかも、なんか不思議なピントのぼけたエフェクトがかかってるし。これって、PCやなんかで加工したわけじゃないんだぜ? デジカメで普通に撮ったらこうなったんだ。つまり、実際にこういう色でこういう光に照らされている場所があったんだよ。 南千住から、見に行ったんだけど、途中、ふと狭い路地をのぞきこんだら、そこに住んでる人達が外で涼みながら花火見物してて、このセピア色のレトロな世界があったんだ。ちょっとしたファンタジーだったね。 なんだか、全体的に、U2とかR.E.M.とかが使いそうなジャケの雰囲気だし、しかも、和風のテイストもばっちり入ってるし、もう、完璧って感じ。
ゆうじろう: 確かにこのジャケットはちょっとユニークだよね。
Tone: 裏面のジャケットは、白髪橋っていうのかな、そのあたりから、隅田川を眺めた光景になってる。花火見物で、人がいっぱいいたけどね。川面に、屋形船がいっぱい浮かんでいて、それらの明かりと、花火と、とてもきれいなジャケになってると思わない? 花火を撮るのって思いのほか難しかったんだけどね。作り物ではない、現代日本にある、素朴で生活感のある「和」っていうのは、イマリ・トーンズとしても重要なテーマだから、前回の「無責任なメシア」のときもだけど、この「fireworks」のジャケもすごく気に入ってる。
ゆうじろう: なるほどね。じゃあ、嫌かもしれないけど、毎度手間のかかる、楽曲解説に入ってみようか。
Tone: 了解。で、楽曲解説にいくまえに、再度述べておきたいんだけど、今回、「Color Of Hers」と「fireworks」の二枚については、サウンドの面はすごく満足してるんだ。ギターサウンドにしても、過去最高に納得がいってるし、どのパートにしても、機材の選択や使い方など、ここへきてそれなりに結実した感がある。どのパートにしても、ドラムに関してもベースに関しても、これまでの10枚の中で最高のサウンドだよ。だからこの「fireworks」、悔いのない最後の花火になってるんじゃないかな。使用した機材などは、この前「Color Of Hers」の時にお話した通りです〜。
ゆうじろう: OK。じゃあ、1曲目、「報せ来る」。
Tone: この曲は、2003年の11月デモの中のひとつです。実はまだ11月デモの中にもいい曲はたくさん残っている。あの時も55曲書いたからね。だから、人生の中で主要な曲は形にした、って言っても、実はまだたくさん残ってるんだなこれが。実際、書こうと思えばこれからもいくらでも曲は作れるだろうし、ポップミュージックの曲作りなんてそんなに複雑なもんじゃないからね、ひょっとすると、僕が本当にいい曲を書くのは、実はこれからなのかもしれない。そんな気もしてる。 ともあれ、この「報せ来る」、しらせきたる、と読むんだけど、このタイトルだけでも、なんだか、ワクワクする印象を受ける。そして、思わせぶりなイントロと、大袈裟にドラマティックな展開。この曲は、どっちかというとコンテンポラリーな今の日本のロックが好きな子たちのために書いたんだよ。叙情的なのが好きだろ、日本人って。「光のヒーロー」の時も、虚数少年2や丘上烈風なんかをやったけど、方向性のベクトルとしてはそのへんに近いよ。ギターソロも無いしね。
ゆうじろう: 確かにドラマティックで叙情的な印象を受けるね。
Tone: もちろん、コンテンポラリーな今の日本のロックシーンが嫌いなわけじゃないんだけどね。若い子向けっていうか、受けを狙ったわけじゃないんだけど、こういうのもアリだよね。でも、それであっても、サウンドの質感は、あくまでイマリ・トーンズ本来の、ギターが中心となったハードロックの質感だよ。あと、ドラマティックなサウンドの秘密としては、ギターやドラムにかかったディレイがとても良い効果を生んでると思う。力みのない、悪くないオープニングナンバーになったんじゃないかな。
ゆうじろう: じゃ、次、2曲目、「100 wonders」。
Tone: この曲も2003年の11月デモからだね。この時期の楽曲は、「異能ハードロック」を意識してて技巧的に結構レベル高いからね。この曲もそこそこに妙な完成度を誇ってるんじゃないかな。当時、はらっちに、スパルタローカルズっていう、昔のGang Of Fourみたいな感じのポストパンクのバンドを聞かされて、じゃあちょっとそれ風の曲を作ってみようか、って作ってみたのがこの曲。もっとも、いつものことだけど、出来てみれば全然違うものになっちゃったけどね。歯切れの良いサウンドが印象的なんじゃないかな。こういった曲でも、絶対にギターが中心になって楽曲を構築するっていうのは、僕のこだわりっていうかプライドみたいなもんだね。あと、ヴォーカルメロディ。なかなか、ちょっと変わった印象を与えるメロディになってると思う。この曲は世の中の未知や不思議について歌ってるんだけど、その不思議感を演出するのに、このAメロのメロディとかは一役勝っていて、自分としては座布団一枚くらいあげてもいいんじゃないかと思ってる。
ゆうじろう: 座布団ね。山田くんに頼まなきゃ。
Tone: あとこの曲のギターソロ部分が、僕の好きなsuedeの某曲にちょっとだけ似てる気もするけど、まぁ無視で。
ゆうじろう: じゃあ次ね。3曲目、「初春恋風」。
Tone: この曲もサウンド悪くないよね。サウンドについて言うとね、今回、録音さ、9月から11月一杯にかけて録りをやったんだよね。このアルバムは、ジャケットとかタイトルとかおもいっきり夏なんだけど、実際は秋に録ったんでね、空気は乾燥してきてて、音像としては冬な感じのすっきりした音像になってる。しゃっきりしてるというか。実際、引き締まったいい音が録れるのって冬とかの方だいいと思うんだよね。もちろん、「Kodomo Metal」の時みたいに、夏のじめっとした音像がいい結果をもたらした例もあるんだけど・・・・。
ゆうじろう: 確か2月くらいの音が一番好きだって言ってたよね。
Tone: まぁ場合によるんだけどね。で、この初春恋風、またタイトルが変わってるんだけど、一応、はつはるれんぷう、と読んでください。「光のヒーロー」に、丘上烈風、ってのが入っててちょっとした代表曲だったけど、この曲は、それとちょっと似てる。やはり叙情的なところが。この曲はちょっとしたドラマだね。そんで、僕なりの解釈のラヴソングだと思う。僕は、滅多に、ラヴソングというか、いわゆる男女関係をテーマにした曲って書かないし、書けないけど、それはいわゆるラヴソング的な解釈の恋愛にリアリティを感じないんだけど、これは、そんな僕にとっての、もっと大きな視点で書いたラヴソングだと思う。なにしろ、時を越えちゃってますから(笑)
ゆうじろう: 歌詞に、江戸がどうとか、京の都とか出てくるよね。
Tone: ほんとわけわかんない歌詞なんだよ(笑) 江戸とか京とかにとどまらず、太古の昔とかさ、サイド4とかさ、ガンダムじゃないんだから。これってたぶん、完全に、時を越えた愛とか人間の営みの連続性を歌ってるか、あるいはさもなくば輪廻のことを歌ってるんだよね。自分にとってのリアリティのあるラヴソングを書こうとしたら、輪廻について書いちゃうんだから、世話ないよね(笑) でも、人はいつの世代でも、いつの時代でも、時を越えて愛し合ってきたんだ、って、そういうことを書きたいんだと思うんだ。実際、時代劇ソングだと思うよ。ちょっと和風のサウンドだし、後半のソロなんて完全に和風の琴というか三味線ソロだからね。「Color Of Hers」にはSamurai Kidsってタイトルの曲を入れたけど、この曲も、ひとつ間違えば、Ninja Loverとか、そういうタイトルにしようかと思ったくらいさ(笑)
ゆうじろう: 日本人の琴線に触れる楽曲かな。
Tone: そうだね。歌詞に出てくる少年と少女も、もちろん設定は現代でいいんだけど、むしろそういった歴史の中の印象でさ。現代社会の枠組みの中だけじゃなくて、もっと根源的に、生まれてきて恋をして、そして懸命に生きてっていう、そういう人間としての生の根源的なところを表現したいんだと思う。14、5歳くらいだと、現代だと普通に中学生とかだけど、戦国時代だったら立派にもう殺し屋の忍者かもしれないからね(笑)
ゆうじろう: 時代劇ロックだね。
Tone: そんなところかな。まぁ、うまく説明できないから各自解釈してよ。 あと、「初春恋風」というタイトルには、この叙情的なサウンドを含め、やはり叙情性で結構支持された「丘上烈風」を凌ぐ曲になってほしいという願いもありますね。一種、続編というかシリーズもので。あと、タイトルに風、とついてるからにはこの曲も得意の風シリーズなのかな。あるいは風シリーズの最後の作品かもしれないね。最後にして、最大のヒット、となると嬉しいな。
ゆうじろう:じゃ、次、4曲目の「何かを信じて」。
Tone:あのね、この曲、実は前の二枚の時に録ってたんだよ。ピアノの関係で。 今回この曲は、ヴォーカルとギターソロは秋に録ったけど、その他のギターとかドラムは全部夏に録ってるのね。 さっき、秋に録ってサウンドが乾いてるって話をしたけど、この曲はそういう事情で夏に録ったので、この曲だけサウンドが違うかもしれない。サウンドの匂いや質感が。
ゆうじろう: そう言われてみるとね、なんとなくそんな気がしちゃうよね。簡単に暗示にかかる(笑)
Tone: この曲はイマリ・クラシックスってやつですね。高校3年のときに作った楽曲です。高3の夏だったと思う。 ピアノで曲を作ると、技術が未熟だから、ロクな曲が出来ないんだけど、その分素直な曲になってしまう、というそういう例ですね。さらには、このサビの下がっていくコード進行は、J-POPのヒット曲では黄金の定番。当時でも、ほらたとえば、ZARDの曲とか、岡本まよだかなんとかいう人の曲とか、ありました。で、僕もひとつ作ってしまった、と。誰でもひとつは作るからね、これ。でも、僕の曲は素直なもんだぜ、何の飾りもない、生活と体験に根ざした音だよ。あのね、こういう曲、田園ソングっていうか、田んぼソングっていうか、農耕ソングだと思うのね。農耕民族日本人にしか出せないメロディとサウンド。「Prototypes」に放りこんだ「今君に会いたいよ」も同質だと思うんだけど、素直で素朴で祈りに満ちた音。和風っていうのとはまた違うんだけど、現代日本の生活に根ざした、素朴な音を作ることができてよかったと思ってる。とにかくピュアで素朴で純真な曲だよね。
ゆうじろう: じゃあ次、5曲目、「なんてことない」。
Tone: この曲はまた例の「自己流ツェッペリンシリーズ」ですね。厳密に言うと高校時代の曲ではないけれど、一応Imari Classicsに分類される。1996年の4月に、大学に進学する際に、新しい下宿に向かうまさにその電車の中というか、駅で作った。もっと詳しく言うと、新幹線降りて、新横浜〜菊名のあたりで作ったね(笑)そう菊名駅で作った曲さ(笑) 「Color Of Hers」に放りこんだ「Magic」が、自己流ツェッペリンシリーズの最初のものだと言ったけど、この「なんてことない」は、実にその2番目のものですね。 この曲は、その自己流ツェッペリンシリーズ特有の、余裕しゃくしゃくな人をなめたサウンドの上に、これまた非常に前向きで、楽観的な歌詞を乗せた、「世の中、なんてことない」って。それは、他でもなく、当時の自分自身の状況が、不安でいっぱいだったから。ハニーちゃんと遠距離で離れてしまったり、あといろいろ、先が見えなかったからね、書かないけど。 でもそんな中で、僕は自分をはげます意味で、この曲を書いた。これは、そういうバックグラウンドを持った曲かな。だから、どことなくコミカルではあるけど、勇気が出る曲なはずさ。非常に前向きで楽観的な曲だね。自分にとってもそうだったけど、またも自由に生きようとする若者に対してのひとつの応援歌なんじゃないかな。そんで、今回この曲では、ギターソロを頑張りました。いや、頑張った、ていうのも違うけど、弾いてみたら、そこそこ速さのあるソロになった。フレーズとしては単純なフレーズを繰り返してるだけのソロなんだけど、妙にスピード出してしまって。ただ、逆に考えると、あれー結構がんばってピッキングしたんだけど、しょせん僕の限界ってこの程度か〜、っていうか、もっと速く弾けると思ったんだけどな〜、っていう(笑) まぁしょせん、そんな言うほど速くないですね。残念。でもソロとしては悪くないソロだよ!
ゆうじろう: じゃあ次、6曲目、「浮気なカンガルー」。
Tone: 前回の「異能レース」に収録した「ぼちぼち」に続いて、今回もこの曲でうちのハニーちゃん、つまりイマリちゃんが、リードヴォーカルを取ってますね。というか、歌わせてみました、無理矢理(笑) 曲としては、クリーン気味のギターと軽いビートを生かした、ギターポップ系というのか、つまりはなんというか、僕には打倒ストロベリー・マシンという目標があるからね(笑) まぁ別に本当に打倒しようと思ったわけではなく、たまたまこういう曲があったっていうだけのことなんだけど。歌詞の内容もなんというか、ハニーちゃんの声を借りて、普通に恋愛のいち風景を描いてるしね。面白い歌詞だと思うけど。
ゆうじろう: でも「死んでやる」とか言ってるよ。
Tone: あんまり普通でもないかな(笑) あいしてる、はずだよ、あいしてる、んだけどね、だからね(笑) これね、みねっち&あっきーに歌ってもらったらいいかな、と思ってたんだけど、ハニーちゃんに歌ってもらったらぴったり来たのでそれでOKにしちゃった。でも、この前の「ぼちぼち」よりも、作品としてはコンパクトにうまく収まったんじゃないかな。結構気に入ってるよ。まぁ打倒ストロベリーマシーンってことで(笑) あとねえ弾いてみると、意外とギターが難しい。ひたすら運指練習してるようなリフだからね(笑)
ゆうじろう: 結構レコーディング苦労してたよね(笑)
Tone: いざレコーダーが回ると失敗するんだよな(笑) ともあれ、ここまで解説して思い出したんだけど、これは言っておかなくちゃいけない。 たとえば前回「異能レース」では'99年に作った快作「Kodomo Metal」を越えるという命題が課されていたわけだけど、 まぁ越えたかどうかは別にして、唯一無二の世界観を創り出すことには成功したと思うんだけど、 同じようにこの「fireworks」にも、残ったひとつの命題が課されていた。 それは、'04年〜'05年にかけてバンドで作った「光のヒーロー」を越えること。 あの「光のヒーロー」は、みねっち、はらっち、と3人で作ったものだけど、やはりバンドということで、バンドらしい非常にいきいきとしてわかりやすいサウンドが収められていた。演奏もタイトだしね。 バンドがバラけた後、こうしてキャリアの集大成をすべく一人で4枚作ることにしたわけど、 やっぱりバンドの方が良かった、なんて言われたらイヤじゃん? あの「光のヒーロー」の弱点は、バンドらしく明快な音を出しているけど、逆に音楽面で実体としてのバンドの枠から1歩も出ていないところにあると思うし、その点は、前回の二枚「異能レース」「無責任なメシア」で十分上回ったとは思ってるんだけど、自分で叩いたドラムなどリズムトラックの未熟さもあって、サウンド面での明快な説得力を持たせるには至らなかった。 で、今回、自分で叩くのも2度目ということで、前よりはずいぶんマシになってるし、これは最後のチャンスだな、と。 「Color Of Hers」に関しては、様式美路線で、過去の自分との対決で精一杯だったから、この「fireworks」は、光のヒーローのときと同じように、Imari本来のあけっぴろげなバラエティ路線だしね。このアルバムで、「光のヒーロー」を超える明快な説得力にチャレンジしよう、と。そう命題を投げかけた。
ゆうじろう: で、作ってみて、その目標は達成できた?
Tone: 僕は達成できたと思ってるよ(笑) 黙ってレコードを聞いてみてよ。ほんと、笑っちゃうくらいさ。 思えばこのアルバム、ちょっと「光のヒーロー」と共通する部分があるんだよね。 冒頭の、「報せ来る」、「100 wonders」、「初春恋風」、という流れは、「光のヒーロー」の時の、「Winning Song」、「きれいな色の花」、「虚数少年2」という流れによく似てるしね。しかも、この段階で、破壊力は断然、今回の「fireworks」で越えた、と思ってる。実際のところ、アルバムの前半だけでいえば、この「fireworks」、これまでの10枚の中で、いちばんの破壊力と充実度を誇ってると思うよ。
ゆうじろう: 前半だけで言えば?
Tone: うん。このアルバム、実は後半が、結構手抜きなんだよな。手抜きっていうか、言ったでしょ、「残り物処理」だって(笑) でも、そうはいっても、全然悪いわけじゃないし、たとえば初対面の人に、自己紹介で何を渡すかって言ったら、「Kodomo Metal」でも「光のヒーロー」でも「異能レース」でもなしに、この「fireworks」を渡せばいい、っていう自信はあるね。そういう意味では、とても便利な良い1枚が出来たよ(笑) まぁいずれにせよ、この「fireworks」のバンドサウンドを聞けば、サウンドは完璧に近いしね今回、誰も、「光のヒーロー」のサウンドの方が良かった、なんて、言わなくなるんじゃないかな。きっと。
ゆうじろう: 当り障りの無い内容だよね(笑)
Tone: そうそう、珍しく(笑) じゃあ、後半の解説に移らせてもらっていいかな。 例のごとく、「浮気なカンガルー」までがA面で、次の「A-a-Hello」からB面に移るんだ(笑) で、7曲目の「A-a-Hello」なんだけど、のっけからこれはコミックソングですね。 どうしても、どっかでコミックソングをやらないと気が済まないという(笑)
ゆうじろう: 悲しい性だね(笑)
Tone: まったくだよ。でね、この曲は、2003年頃とかに、ちょっと路上でギターもって歌ってみたことがあるんだけど、そのときにその路上パフォーマンス用に作ってみた曲なのね。結局あまり歌わなかったけど。 路上って特殊な世界だし、この曲は、そういうわけですごく安直なコード進行とメロディで、すごくわかりやすい内容になってる。ていうか、曲そのものが自己紹介ソングだしね。というわけで、コミカルな自己紹介ソングをひとつ作ってみました(笑) 自己紹介ソングですが、内容は、あまり無いです(笑)
ゆうじろう: 確かに内容はあまり無いね(笑) 面白いけど。
Tone: うん、この曲はね、路上ってこともあって、人と人との出会いとか、一期一会のコミュニケーションってことを歌ってるんだよね。一期一会の出会いを大事にするってことで、ちょっとした軟派ソングにも聞こえると思う。まぁ、でも、僕のひとつのキャラクターは出てるんじゃないかな。あんまりライヴとか人前で演奏したくないけどね(笑) あとはね、間奏の部分で、また例によってセリフをしゃべってるんだけど、何をしゃべろうかと思って思いつかなかったんで、エセ政治家になって辻演説しちゃった。これは最大のジョークかもしれないね。今、本当に政治家になろうかと考えてるんだけど、実際になる前から、政治家としての自分自身をパロディしてりゃ世話ないよ、っていう。まぁ、人をなめてるっていうか、芸人の性だよね(苦笑)
ゆうじろう: じゃあ、次、8曲目「Ev'rything's Al'right」。なんかこの点「’」が多いタイトルだね。
Tone: ひねりのないタイトルだったからさ、なんか差別化を図りたくて(笑) この曲もImari Classicsだね。高校2年のときに作った曲じゃないかな。この「fireworks」の楽曲は、「何かを信じて」と、「なんてことない」、それから、このB面の「Ev'rything's Al'right」以降の曲は全部イマリ・クラシックス、つまり高校時代の楽曲だね。12曲中7曲ってことになるか。まぁ、残り物処理だからね。 ともあれこの「Ev'rything's Al'right」、この曲もミディアムテンポのやさしげなサウンドの曲だけど、珍しく歌詞のイメージ的には、30代くらいの大人の男性をイメージしてるかな、カップルというか夫婦の情景だよね、30代くらいで、これから家庭やキャリアを築き上げようとしてる人の人生の情景なのかな、歌詞が男女まじってる感じなんだけど、奥さんがあせらないでね、って言ってるのかな。よくわからんけどね、自分で書いといて(笑) でも、そういう家庭的で、夢を持ってがんばっている人を応援する、あたたかい内容の歌だから、案外人に愛される曲かもしれない。でも、サビのキーが高いんで、ライヴではあんまり歌いたくないね(笑) レコーディングでは、三声のコーラスが炸裂してるからキレイに聞こえると思うけどさ。
ゆうじろう: The Alfeeかと思うよね(笑) じゃ、次、9曲目「Orange Juice」。
Tone: これこそ本当の手抜きっていうか、残り物処理だよね。完全に捨て曲かもしれん(笑) これも高校時代の曲で、もはやいつ作ったかも覚えていないんだけど、今回、なんかこの曲を入れたくなっちゃって。どうしようもない曲なんだけどね。海辺でジュースを飲んで楽しく過ごすっていう、ただそれだけの内容も何もない、安直なメロディの曲なんだけどね。まぁあんまりコメントしたくないな(笑) まぁでもバカみたいでいいんじゃない?(笑) サウンド的には、VSTiのソフトシンセによるアナログシンセみたいな音が生きてるし、あとね、曲の最後の部分で、スギペとはらっちがさわいでる音とか、王様ゲームやってる声とか(笑)、あとね、元Calcanon Electric Solutionsのヤギケン氏が、うちに遊びにきたときの様子が収録されてますね。アコギ弾いて遊びで歌ってるただの即興パフォーマンスなんだけどね。いろんなバンドと対バンしたけど、僕は彼のバンドが本当に気に入っていてね。解散しちゃって残念なんだけど、彼の今後の活動にとても期待だね。 あとは、ギターでひさしぶりにスライド・プレイをやってるよね。まぁ、スライドなんていうような全然たいしたものじゃないけどね(笑)。
ゆうじろう: 結構楽しげだけどね。じゃ、次、10曲目、「La Mere」。ピアノ曲だね。
Tone: ピアノ曲だね。でも、これも高校のときの曲だし、そういうわけで、例によってピアノの鍵盤の「白いところ」しか使ってないから(笑) 紛れも無いシロウトによるインチキピアノ曲ですね。本当に、10分くらいあれば誰にでも弾けるんじゃないかな。
ゆうじろう: 雰囲気だけはそれなりに聞こえるけどね(笑)
Tone: なにせインチキピアノだから(笑) でもね、一応、真剣には弾いたんだぜ、僕は、10歳くらいでピアノのレッスンは放棄したけど。母親も、僕は男の子だし、無理にピアノを弾く必要はないってことで、それ以上僕にピアノをやらせることをしなかった。ていうか、僕はむしろ今から母上にピアノを習いたいくらいだけどね(笑) 妹はしっかりと音大に行ったけど、本当は僕ももっとちゃんと、母上の音楽を受けとめて、ピアノに取り組むべきだったのかもしれない。まぁ、すべては僕の名前を「響」とつけなかった両親が悪いんだよ、といいつつも、自分で代わりに「Tone」と名乗った僕としては。 この曲のタイトルをどうするかっていうのは迷ったんだ。高校のときに作ったときは単に「冬」っていうタイトルだった。で、今回、それも違うよな、と思って、いろいろ考えた。僕にとって、ピアノ、といえば、母、というイメージと、重なる部分がかなりあるから、あと、母親は海辺の生まれだしね、僕自身の幼い頃の記憶も含め、海、っていうタイトルかな、とも思った。で、「La Mere」っていうフランス語に、母(mere)、っていう意味と、海(mer)っていうニュアンスを、両方持たせることにしたんだ。そっから先は、まぁ自分で解釈してくれよ、っていう(笑) まぁ、そうはいってもただのインチキピアノだよね(笑) どうせ下手っぴだしさ。
ゆうじろう: インチキでもこれだけ弾けてればいい、と、せめて僕が言ってあげよう(笑) じゃ、次、11曲目、「Silent Hearts」。
Tone: このサイレントハーツっていうのが、僕が中学〜高校の頃にやっていたバンドのひとつの名前だっていうのは前にも話したし知ってるよね。僕にとっては、思春期の人格の目覚めと前後して、コンテストでの活躍以外にも、メンバーのレベルの高さや、初めてのオリジナル楽曲の実験室であったことも含め、とても重要な体験だった。 で、これは、高校3年のときに、青春時代のひとつのしめくくりとして、そのバンドの名前をとって、曲を作ってみた。 この曲は、「無責任なメシア」に収録した「3コードで行こう!!」と共に、僕の青春のしめくくりとなるまとめのエンディングテーマだった。だから、今回、アルバム10枚の最後のエンディングにも、僕はこの曲を持ってきた。 歌詞を見てもらえば、わかると思うんだけど、誤解を恐れずにいえば、この曲はずばり、いじめられっこへの応援歌なんだと思う。僕も間違いなくいじめられっこだったしね。でも、それをはねかえしていった思春期の体験が、僕にとってのすごく大事なものになっていることは間違いないんだ。Silent Heartsっていうタイトルは、そういったひたむきな心、まっすぐな心に対する、応援のエールなんだと思う。
ゆうじろう: ストレートなハードロックだよね。
Tone:: うん。これも、実際に当時のバンドで演奏していた「ブレイクスルー」同様、僕なりの’80sロックの解釈なんだと思う。これも歌うのは難しかったよ。キーも高いし、実際に高校の頃にこの曲を作ったときも、誰が歌うんだ、と思ってた。当時のバンドのヴォーカルの、たとえばDaisuke氏に歌ってもらったとしても、きっと難しかったと思うよ。でも、それも、今回こうして、自分で歌うことができた。10年の後にね。これはひとつの奇跡なんだと思う。この曲でも三声のコーラスが効果を発揮してくれたし、そして、とてもきれいな僕らしいギターソロを弾いてる。他のどの曲だってそうだけど、この曲に込められたメッセージは、僕がかけがえのない思春期や青春を生きた、まぎれも無い実体験のメッセージなんだ。すべての子供たちや、すべてのいじめられっこたち、っていうんじゃないけれど、うん、ぜひ、届いたらいいな、と思う。このメッセージが。
ゆうじろう: OK。じゃあ、ついに最後の曲だね。12曲目で、「生徒会室ブルーズ」。
Tone: ね、Silent Heartsで感動的に終わっときゃいいのにね(笑) 僕は、感動大作で締めるのは好きじゃないんだ。アルバムの最後にはいつもジョークを入れたいんだよ。僕はVan Halenの大ファンで、Van Halenのアルバムはいつでもジョークで終わっていた。The Beatlesだってそうだろ? Abbey Roadだって、Sgt.Peppersだって、最後はジョークで終わっていた。そういうものなんだよ、きっと。 この曲は、高校のときに作った曲だけど、歌詞をのっけたのは今回今年の初夏のことだよ。だから、当時の僕との共作ってことになるのかな。曲タイトルのとおり、高校の生徒会室で作ったんだ。置いてあったアコースティックギターを弾きながらね。すごく単純なリフだけど、僕は気に入っていた。僕は生徒会でもなんでもなかったんだけどね。単に遊びに行ってたんだよ。 才能をもてあまして退屈してる学生のことを歌ってて、すごく、高校時代含め僕のパーソナリティをすごくうまく表現してる曲だと思う。ドラムやベースのサウンドもすごくいい。これに関しては、ジョン・リー・フッカーのブルーズアルバムを聞いておいてよかったと思ったね(笑)
ゆうじろう: 中学生のときは生徒会もやってたんだよね?
Tone: うん、そうだね。いろいろと思い出したくない記憶があるよ(笑) 僕は小学生とか子供の頃から、クラス委員とか、やらされる方だったし、回りからそう言われて、やらなきゃいけないもんだと思ってたし。でも、ロックを聞くようになって、もっと自分の世界が広がると、「リーダー? ゴメンだね。わざわざ他人の面倒を見る気は無いぜ」ってなるじゃない(笑) 実際この曲でも、最後のセリフ部分とか、どっちかというと政府を転覆させる役の方にいってるじゃない(笑) あ、この曲のヴォーカルも、最後のセリフ部分を含めてファースト・テイクの一発ですよ。素晴らしいね(笑) だから、自分が、この先、政治という問題に向き合ってみようかと思ったときに、実はすごいイヤだった(笑) あたりまえだよね。なんでこの国の難しい現実に、自分がいろんなものをかけて向き合わなきゃいけないのか、って。
ゆうじろう: 学生時代にも、選挙、ていうと嫌な思い出があるものね(笑)
Tone: そうそう。できればやりたくないんだよ、そんなこと。 この二枚のアルバムの制作中ね、自分の身の振り方を考えて、ずっと悩んでたんだな。 渡米して、アメリカに移住しちゃおうか、って。アメリカで、大好きな料理をやって楽しく生きようか、って。 日本で生きていくのならね、この国を変えていくことに向き合うしかないんだよ。でも、そんなの大変でイヤだから、渡米しちゃおうか、って。どうやったらグリーンカードが取れるか、とか、本気でいろいろ調べてたね。 だって、日本にいるのと、どっちが幸福なロックンロールライフが送れるかってわからないじゃない? だから、日本に残って政治をやるのか、渡米するのか、ずっと本気で悩んでた。 まぁ、たくさん人と話したり、出会いがあったり、あるいは自分の運命に向き合ってみたり、 結局現在のところ日本に残る方を選択してるわけだけど、 まぁ政治はめんどうだし大変だしイヤなんだけど、 でも、結局のところ、やることはミュージシャン、アーティスト、芸術家と、同じ部分がたくさんあるんだよね。 自分のパーソナリティひとつで大衆に向き合って勝負していくところとかね。 あ、これは、同じだよな、って。 だったら、芸術家/アーティストの道を選択した時点で、政治家やっても変わらないか、って。 ほら、僕は「漂泊の救世主」とか、社会的なテーマや革命家としての要素も内包してるんだし。 もともと僕の音楽はね。
ゆうじろう: OK。じゃあ、楽曲の解説も終わったし、まとめてくれるかな。
Tone: うん、この「fireworks」の出来には、すごく満足してる。聞きやすいし、内容も充実してる。後半の手抜きなポップさもご愛嬌だ。サウンドも過去最高の出来。’95年にハニーちゃんと出会って、’98年以来、人知れず自分の手で録音制作をしてきたわけだけど、こんなふうに自主制作するのも、たぶんこれで最後になると思う。最後にこういう良いアルバムを作ることができて、とても満足してる。 これからのImari Tonesとしての活動については、正直まだ具体的にはわからない。 来年度からのライヴの準備もしてるんだけど、決して順風満帆なわけじゃないし、まだ時間がかかるかもしれない。 政治的な活動も始めたいし、新たなレベルでの音楽制作もやることになるかもしれない。 だから、今後についてはいろいろとわからないことだらけなんだけど、 でも僕は、今とても、過去最高に充実した気分なんだ。 そして最高に解放された気分だよ。 だってそうだろ、こうして作り終えて、やっと僕は今、自由になったんだから。 ハニーちゃんに出会って以来、部屋に閉じこもって、音楽という赤ん坊を育てていた未婚の母は、やっと今、成長した子供を連れて、外に出れるんだから。 もっとも、「子供」に学費やらなんやらがかかってくるのは、これからかもしれないけどね(笑)
ゆうじろう: 反抗期もあるかもしれないし(笑)
Tone: そうそう(笑) そして、やがて僕の手をはなれてみんなの元へ行ってくれればね。 僕としては、あとはそれを望むだけですよ。
ゆうじろう: 今日はありがとう。制作ほんとにおつかれさま。
(2005年12月)
END |